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博物館経営の研究者のBlog.
研究を中心に趣味や日常などについても紹介していきます.

真鶴まちなーれ開催!
すっかりご無沙汰しておりました... さすがに過去最長のほったらかし期間かもしれません(汗)。

というのも、ある仕事にかかりっきりでウィークデイは茅ヶ崎、週末は真鶴と二重生活を繰り返し、なかなか一息ついてBlogを書く気持ちを整えることができませんでした。まあ、いつもの書かない言い訳をしつつ「Blogを書くのにここまで構えているから、なかなか書けないんですよね」という... 反省しております。

今後は仕事や研究だけじゃなく、ライトな話題も含め、もっと頻繁に書いていきたいと思います(固い決意です!)。

そして、表題の件です。すでに二週間程前のことですが、正式に情報公開になりました。

真鶴まちなーれ(真鶴まちづくりアートプロジェクト)
会 期:2014年8月9日(土)〜8月31日(日) 23日間
開催地:神奈川県真鶴町
総合ディレクター:MUSSET(ミュセット)
    奥本素子(総合研究大学院大学 学融合研究センター)
    平井宏典(和光大学 経済経営学部経営学科)
主催:真鶴まちなーれ実行委員会
共催:NPO法人 真鶴1000年の森
後援:真鶴町/真鶴町教育委員会
公式HP(随時更新中) Facebook Twitter

ここ数年、ミュージアム・マネジメントにおける地域連携や外部経済効果といった文脈で芸術祭を研究してきました。
この度、故郷の真鶴で開催される芸術祭の総合ディレクターという立場で、今までの研究の成果を実践に還元する機会をいただきました。

真鶴まちなーれは、スタイルとしては「芸術祭」を謳っていますが、瀬戸内国際芸術祭、越後妻有トリエンナーレ、あいちトリエンナーレ、横浜トリエンナーレ等の大規模な国際芸術祭と一緒に括られるとちょっと困ります。いかんせん規模がとっても小さいので(まあ誰も同列に並べようと思ってないのは分かっていますが)

もちろん規模の問題だけではなく、色々な芸術祭を見てきた中で、自分なりに疑問を抱いたいくつかの点に対する現時点での答えが真鶴まちなーれの形になっているとも言えます。


(1)地域振興としての芸術祭

芸術祭は観光振興・地域振興に資する新しい手法として、いまや日本各地で大流行中。もちろん、真鶴まちなーれもこの流れの中にあるわけです(むしろ後発組もいいところ)。特に、産業の衰退や過疎化・人口減少等に悩む地方では、そのような切実な問題に対する「地域の課題解決型芸術祭」なんて言い方もあるようで。

先日、日本創成会議の人口減少問題検討分科会が発表した「消滅可能性都市896市町村」のリストに真鶴も入っています。よく取り上げられる芸術祭の多くは数千万円から数億円単位の予算で運営されています。しかし、本当に切迫した上記のような課題を抱えた地域が、いくら先行投資とはいえ、そんな予算を投入できるわけがありません。企業協賛や補助金等を上手に活用している事例も少なくありませんが、私はまず自治体の負担が現実的なレベルで実現しうる形を考えてみたかったんです。

そこで、今回(だけ?)は完全な民間主導(有志の実行委員会方式)で予算ゼロから作り上げるというスタートとなりました。


(2)適正規模の芸術祭

となると必然的に規模は小さくなるんですが、それは適正規模を考えてのことなんです(半分、強がり&言い訳かも)。

芸術祭でよく聞くクレームのひとつは「会場が広すぎる上に、アクセスが悪くて全部観れなかった!」という会場(エリア)構成に関するもの。これは本当によく聞くし、確かに「なんでここに...」と思うような場所もあります。

そして勤勉な日本人は、限られた時間の中で効率的に会場をまわってすべての作品を見ようとする。もちろん、スタンプラリーでもあった時にはコンプリートが目標となる。

これはもうね、目標の転移ですよ...

なぜかアートを楽しむための芸術祭が苦行の場となっている悲しみ(泣)。私は調査で行くことが多いので、そりゃ走ることもありますよ。でも作品が展示してあるA地点からB地点に移動するだけなら、広いだけのエリアなんて迷惑なだけじゃないか!

もちろん、移動の楽しみがあれば別なんですよ。あいトリ2013の総合監督である五十嵐先生は「ただの移動にならないように、会場周辺の魅力的な建築を紹介するガイドマップを作成しました。それを見ながらまわってもらえば、移動も楽しめるはず。それに元々ある建築物を紹介するんだからコストはゼロだ」と仰っていた。ご自分の専門を活かした良いサポートだと思う。

真鶴まちなーれは適正規模です。エリア内の作品を観るだけなら半日で可能です。


(3)「まち」が一番の作品です

そして、問題の移動です。肝はここです。真鶴まちなーれは「町歩き(移動)」自体がアートなんです(ここら辺からが新しい形を模索しているとこです)。

真鶴町は、数値基準ではなく言葉を用いた「美の基準」によって発展の方向性を定めているユニークな手法をとっています。この取組は国内外で高い評価を受けており、世界デザイン都市サミットにおいて日本では名古屋や神戸といった大都市と肩を並べ「草の根デザイン実験都市」と評されました。華美な寺社仏閣やモダンな高層建築はないけど、真鶴の風景は特有の地形と生活に根ざした配慮の息づいた空間を形成しています。

だから、町歩きをして美の基準の要素(世界)を体感してもらうことが一番の作品なんです。そして、その町歩きの中で「美の基準」をコンセプトにした様々な現代アートやワークショップを楽しんでもらうことを大切にしています。町の魅力を発信して芸術祭が終わった後でも真鶴に足を運んでもらえるようにする、それが会期終了後も見据えた真鶴まちなーれの観光振興です。


(4)「できごと」をつくる

真鶴まちなーれは、町歩きをはじめ「ワークショップ(WS)」を主体とした芸術祭です。頭だけじゃなくて体も動かす「体感する芸術祭」です。いわゆる美術館等での壁にかけられた絵を鑑賞するという従来のスタイルより、一歩踏み込んで自分からアクションするスタイルです(気軽にみれる作品もありますのでご心配なく)。

さらにWSをやるのはアーティストだけじゃありません。研究者(科学者)、建築の研究室、町の事業者、ミュージシャン(音楽イベント:「響け、マナヅル!」)、学生(ボランティアではない運営スタッフ)など、色々な人が関わります。特に、真鶴まちなーれでは自然科学(サイエンス)や建築(都市計画)の要素もふんだんに盛り込まれています。ここは、他の芸術祭ではあまりみられない点だと思います。真鶴まちなーれでは、きっと普段はあまり会うことのないアーティストや研究者などに「出会う」こと、そんな非日常のできごとが会期中にエリアのそこかしこで起こります。

なので、エリアに展示してあるアートを観るだけなら半日ぐらいで終わってしまいますが、

町歩きをして、
美味しいお魚を食べて、
ワークショップを体験して、
メイン会場のコミュニティ真鶴で一息ついて、
夜のライトアップされた作品を楽しみながら港を散策して、
(一泊)
翌日は自然体験ワークショップができる真鶴半島に足を伸ばして、
響け、マナヅル!の音楽を楽しみながら、帰りまでの過ごし方を考える

なんて楽しみ方をして欲しいです。とても小さな芸術祭ですが、丸一日はたっぷり楽しめると思うし、ぜひ一泊して欲しいです!

今度は、芸術祭のコンセプト「美の基準」にも触れたいと思います。
ちなみに次回予告ではありません!近いうちにです!


久しぶりに書いたから、真鶴まちなーれに込めた想いを含めて力が入って長文になっちゃいました。
最後まで読んでくれた方、ありがとうございます。

次からはなるべくコンパクトに、コンスタントに、書いていきたいと思います!
改めてお付き合いの程よろしくお願い致します。
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Comment








おはようございます、山口といいます。近所なので(^^);、
今日は「まちなーれ」に行ってこようと思いました。
webで当サイト見つけ、読ませていただきました。民間主導、予算ゼロ、いいですねー、頑張って下さい。

一つだけ誤植ご報告します。(職業病です、すみません)
×(2)適性規模の芸術祭
◎(2)適正規模の芸術祭

ということでよろしくお願いします。

今日はおいしいランチも、行ってきます!!
from. 山口正幸 | 2014/08/15 09:15 |
山口様、ご指摘ありがとうございます。

私も文章を書く仕事ではあるんですが、誤字脱字けっこうあって(汗)
確かに適正規模ですね、訂正させてもらいます。

自治体からの予算ゼロはやり方さえ確立できれば問題ないと感じているのですが、やはり理想と現実の狭間でなかなか難しいところがあるのも事実ですね。

お楽しみいただけましたでしょうか?ぜひ一度と言わず二度三度とお越しください!私もWS等で現地にいることも多いのでお会いできれば幸いです。
from. 平井宏典 | 2014/08/19 17:49 |
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