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博物館経営の研究者のBlog.
研究を中心に趣味や日常などについても紹介していきます.

指定管理者制度による博物館運営の現場から:その実践と課題
珍しくちゃんとその日のうちに書きます。

本日は日本ミュージアム・マネージメント学会創立20周年記念大会の一日目。

2015年度から「多様化する社会とミュージアム」を3年間のテーマとし、今年度のサブテーマは「組織のマネージメント」。その端緒となるのが以下のパネルディスカッションでした。

指定管理者制度による博物館運営の現場から:その実践と課題
 司   会|緒方泉先生(JMMA理事・九州産業大学美術館教授)
 パネリスト|黒川和男氏(足立区ギャラクシティ館長)
       大高一雄氏(千葉市科学館館長)
       大堀哲氏 (長崎歴史文化博物館館長)

指定管理者制度は博物館に適していないといわれ早10年を過ぎ、根強く残る批判の代表格は「専門職の長期育成が困難」「事業の継続性」の2点かと。このどちらも指定管理の期間が通常3〜5年程度であり、打ち切り(指定管理者の交代)の可能性をはらんでいるということに起因する。

前者について、3館の館長は明快にNOと言いました。論旨はだいたい以下の通り. . . 

まず専門職=学芸員=研究者と考えれば、いま大学の教員等も任期付は珍しくない。

確かに指定管理期間の終盤になってお尻がムズムズしているような人を見るのは忍びないし、生活設計が困難なのは不憫に思うが、そういう厳しい世界に身を置いたことを認識(覚悟)するしかない。

それに優秀な人は指定管理者が交代しても残るし、首なるより早く他にひっぱられるとのこと。
↑これ身も蓋もない話。でも事実(苦笑)

話が人材育成というより、いつのまにか雇用の不安定さになってたけど、仰る通りかと。
議論が日本的な終身雇用を前提としている時点で偏った意見になってしまっているようにも感じる。
大学では人材は流動的だし、研究者が所属を変えるのは決して珍しいことではない(その善し悪しはともかく)。

地域社会と濃密な関係の上で成り立っている小さな郷土資料館のようなところで、職住を共にして長く務めるその地域の生き字引のような学芸員がいることは良いことだと思うが、館種によっては人材流動化が館の経営に大きな損害をもたらすとは考えにくい。



また後者(事業の継続性)についても、3館の館長とも明快にNOと言いました。論旨はだいたい以下の通り. . . 

そもそも誰も3または5年後に終わると思って仕事をしていない。
もちろん指定管理者が交代になる可能性はないわけではないが、そうなった場合、自分たちが計画してきた中長期計画で良い面があれば引き継いでもらえばいいだけの話。

そもそもキチンと評価して、ちゃんと実績を出していれば、打ち切られるわけではない。しっかりと事業を続けていける。


今回の話、納得できる部分がとても多く、勉強になりました。私も継続性の問題は一考に値すると思いますが、ある期間を区切って、その経営が適切かどうか評価を受けるプロセスは必要だと常々思っています。

指定管理者制度については、制度の問題と運用の問題がごちゃまぜになっていて、私は騒がれている問題の多くは運用でどうにかなる(工夫次第でどうにかできる)レベルだと思います。

それよりも、制度設計時の所期の狙い通りに指定管理者制度を導入しているか?
とりあえずできる施設は一律に制度導入することを決めて、適当な金額を設定して「○百万円でまるっと全部やってください」みたいな形になっていないか?ということの方がよっぽど注視すべき事象だと思います。

行政側は設置者としての責任をキチンと果たせるガバナンス体制を構築する気があるか。博物館側は制度うんぬんよりも工夫しなければいけない面が多々あるのではないか。制度ができてから10年以上経ち、改めて組織の問題として向かい合うならこの辺は議論の前段として整理しておきたい気がします。

それとこうした成功事例といっても良い3館の話をそのまま地方で苦しむ小規模な公立博物館に敷衍していくのは少々難しいとも思います。もう少し成功要因の分析等が必要かと。個人的には指定管理者側も色々な形態(例えばJVなど)があるので、その形態の分類や特徴を明らかにしてみるのも面白いなと思いました。

さて明日は会員研究発表の第2会場の司会をやります。いろんな研究発表が聴けるので今から楽しみです!
 
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