from Hirai-Laboratory web


博物館経営の研究者のBlog.
研究を中心に趣味や日常などについても紹介していきます.

Third Wave
2014年のはじめてのエントリーにちょうど一年ぐらい前の話を(苦笑)

San Francisco Museum of Modern Art(SFMOMA)の屋上庭園にあるCoffee Bar。
コーヒーが大好きな私はここでゆっくりと一息つきました。



そう!このカフェは、いま話題の"Blue Bottle Coffee"



現在SFMOMAは改装工事中で閉館しています。SFMOMAのBlue Bottle Coffeeは2009年にオープンして、2016年の再開時にはまたテナントとして戻るそうです。

ミュージアム・マネジメントの観点から、ショップやカフェは単なる付帯施設以上の意味を持っていると思ってます。




トリシュ・ロスギブは「コーヒーがコモディティとして地位が低く買いたたかれる時代から、一流農作物として一種の工芸品(?)としてコーヒーの地位を見直す時代に変化すべきと確信した」として、品質にこだわった豆をその特徴が分かるように浅煎りにして楽しむムーブメントをThird Waveと名付けました。

そのひとつ前のムーブメント、すなわちSecond Waveとして位置づけられるのは深く焙煎された豆を使う、いわゆるラテ系ですね(某有名店のあれです)。


Third Waveの中心的な存在であるBlue Bottle Coffeeは、米西海岸のコーヒー文化を牽引するお店として有名です。2014年度中に日本にも店舗ができるとかできないとか。日本の喫茶店文化に影響を受け、一杯ずつ丁寧にハンドドリップ(ポアオーバー)して提供するのが、Third Waveの特徴でもあります。

大衆迎合するわけではなく、いまの時代の雰囲気を感じとって、創造性を発揮する(または発信する)ことはミュージアム(特にアート系)にとって重要であり、現代的なミュージアムの存在意義だと思います。それは、博物館が過去の遺物を保存して見せるだけの施設ではなく、時を超えて人間の創造性に働きかける機関であることの含意だと思います。
博物館資料を過去→現在→未来へつなぐだけではなく、未来を創造する力もある。そんな博物館の可能性を信じて、日々研究をしている次第です。



そして、何本かの論文でも書いていますが、ミュージアム・マネジメントの変遷を紐解くと、やはりバブル崩壊がひとつの転機になっていると言えます。公立館が多い日本では、潤沢な予算によって「経営」など考える必要がなかった時代から、一気に閉館の憂き目に合うレベルまで財政状態が逼迫することで、はじめて「経営」に向き合うことになった。ある種の目覚めに近いきっかけだったと思います。

一方で、バブル以前に「経営」というトピックが取り上げられることがなかったのか?というとそうでもなく「リピーターの獲得」等の目的意識をもって博物館経営が論じられることもあった。では来館者研究に立脚したリピーター獲得のための理論構築、例えばマーケティング手法が開発されていたかというと、それはほぼない。
同じ非営利組織の病院に比べる経営分析とかは雲泥の差がある。病院では、病床利用率=(入院延患者数÷稼働可能延病床数)×100という指標があり、70%以上が望ましいというボーダーラインの設定等もされている。

非営利組織という枠組みだけでビジネスモデルがまったく違う病院と比べるのは無理があるけど、大学も含め非営利組織もかなり真剣に「経営」に向き合っている。博物館はどうだ?と考えると... 正直なところ意識も研究も遅れていると自戒も込めて思います。

そして、バブル以降、抽象的な議論ではなく、実践が先行(牽引)する形で明らかに以前とは違う「経営」を意識した取組が見られるようになりました。やはり、その初期段階に色々な意味で代表例となるのは東京都写真美術館でしょう。このあたりが、Second Waveと言ってもいいのかな(さぁ、強引に本日のタイトルにこじつけていきますよ!)。


ではミュージアム・マネジメントのThird Waveはどんなものか。

ひとつの大きなトピックは、やはり文化政策や文化経済学の文脈で論じられた博物館の効用だと思います。ビルバオ効果に代表されるように創造都市理論の中で、博物館の役割が新たに明示されたのは大きな出来事だった。
今までのミュージアム・マネジメントの議論はともすると、オペレーションレベルの話に終始してしまうこともある中で、より大きな枠組み、ガバナンスレベルの視点を示したことは非常に重要でした。

しかし、創造都市理論は素晴らしいけど、ことミュージアム・マネジメントの領域では博物館の存在意義を示す新たな視点として非常に説得力はある!ぐらいにとどまってるように思います。
結局のところ斜陽の工業都市であったビルバオを一大観光都市に変えたとされるビルバオ効果は、そもそもグッゲンハイム美術館単独の功績ではなく、むしろ総合的なまちづくりとしての計画によるものだというのが定説ですし、グッゲンハイムの海外展開は資金難等で頓挫している例もあります。

結果的に、日本のミュージアム・マネジメントの文脈において創造都市理論はひとつの重要な視点をくれたが、理論構築はまだまだ未開拓であり、全体的な大きなムーブメントになるのは難しいのではないかと思っています。



ミュージアム・マネジメントのThird Waveは?

いま私が取り組んでいる研究が、Co-Creation:共創理論や、経営戦略の文脈における社会ネットワーク理論を基礎とした領域です。それには地域連携という課題にもう一度真剣に向かい合ってみるという意識も根底にあります。よく「開かれた博物館」を標榜して「ドアは開けている」、でも自分からそのドアの向こう側に行こうとするケースは少なかったように感じています。

今までのミュージアム・マネジメントの基本的な姿勢は、自館の経営能力を高めるために経営資源を外から内へ取り込むことだった。これからは、自館の経営資源を内から外へ積極的に出していき、地域社会との共創の中で新たな価値を創出していく。これがひとつのポイントだと考えています(前者も大切です)。今まったく違うテーマの調査もしているのですが(苦笑)、しばらく私の研究のメインテーマになると思います。


これがThird Waveになるかどうかはひとまず置いておいて、2014年のはじまりに、これからの研究の抱負的なことを真面目に長々と書いてみました。今年はもう少しライトな記事も書いていこうと思ってます。Blogの抱負(課題)は、更新頻度と話題の幅広さ、そしてユーモアのセンスです。

皆様、今年もよろしくお願いします。
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